逢う魔が時(おうまがとき)
「今買ったサンダル履いて帰りたいけど、お昼過ぎたし、
演技悪くない?」
こういうお客様、時々おられます。
先代が下駄や草履売っている頃は
もっと小耳にはさんでいたように記憶しています。
で、その頃先代がしていたのは…
マッチで擦った火を履きものの下から一往復させて
終わり。
お客様はそれを履いて帰ります。
「たそがれ時」という時間帯がありますよね。
むか~し昔(と言っても江戸時代ころくらい迄なんでしょうけど)、
夜明けとともに起き出して活動し
日没とともに床についていた人たちは、
陽が沈み、周りを闇が包み込み始める刻限を
「誰そ彼は(たそかれは)」と言っていたんだそうです。
暗くなるとセンサー感知で
灯りがパッ、なんて便利な現代と違い、
暗闇の押し迫る中、
得体の知れない魔物の出そうなこの時間を
「逢う魔が時」とも呼んで恐れたようです。
ちなみに「大禍時(おおまがとき)」が転じ、
夕方のうす暗い禍(わざわい)の起こりやすい時刻を
指すそうです。
夕暮れ時に差し迫って履きものを
買い求めた人もいたでしょう。
履きものに限らず、
火を使う事で魔を祓い清め無事を願う、
そんな先人の知恵が細々とですが、
今の世にも残っているという事でしょうね…
だから、今日お求めのYさんにも
お昼すぎのことでしたが
このおまじない、してさしあげました。
裸電球の下のテレビのない部屋で
家族で夕飯を食べた
3丁目の夕日的少年時代を過ごした店長としては、
こんな話、
ミョウに好きです。
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